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【遺言の概要】
(1)遺言とは
遺言(ゆいごん・いごんと読みます)は、最近、新聞、雑誌、テレビ等に採り上げられてい
ます。特に、信託法の改正に伴い信託銀行の遺言信託という言葉を良く聞きます。
遺言のイメージとして、映画やテレビドラマなどで余命幾ばくもない人がベット、布団に横
たわり家族がその周りで、「兄弟仲良くし、会社を発展させて欲しい」「お母さんを大切に
して家族仲良くしてくれ」「連帯保証人にはなるな」等の言葉を聞いている事を思い出すと
思われます。
時代劇ドラマで、豊臣秀吉が臨終の間際に徳川家康等の五大老に豊臣家の将来を頼ん
でいるシーンが思い出されます。
しかし、民法の規定する遺言は、このような内容ではありません。このような言葉は親の
志であって、相続人達の良心、道徳心に基づき考えて実行すべき内容です。
法律上、強制できるものではなく、民法上の遺言とは言えません。
★ それでは、法的効力を生ずる民法上の遺言とはどのような内容を意味するのでしょうか!
遺言は、人が自分の死後の法律関係を生きている時に定めておく事(意思表示)です。
分かり難いですが、自分の死後に一定の法律効果を発生させる事を内容(例えば、会社の
株式すべて長男、預金は長女、家屋は次男に相続させる)とし自分の意思に基づき民法の
定めに従って成される意思表示です。これが遺言です。
なお、遺言を行った場合、遺言者の死亡により民法の定める法定相続分とは異なる、遺言
の内容に従った効果が発生します。
また、自分の財産は、売ったり贈与したりして自由に処分することができます。このことは
自分か死んだ後も同様です。遺言によって自分の死んだ後も財産を処分することが自由に
に行うことができます(もっとも、相続人の遺留分を侵害することはできませんが)。
(2)遺言の必要性・目的
① 相続の関する司法統計(裁判所ホームページ参照)よると、家庭裁判所において遺産分割
事件の件数は、昭和40年代後半では約4900件でしたが、平成30年では,13,040件 となっています。
また、公証役場において公正証書遺言を作成する例も、昭和40年代後半は約17,000件で
したが、公正証書遺言の平成30年の件数は11万471件です(出典:日本公証人連合会HP)。
なお、自筆証書遺言の平成30年度における家庭裁判所での遺言書の検認事件数は、1万7847件
です(出典:最高裁判所 平成30年度[司法統計年報])。
遺産分割事件、公正証書遺言が著しく増えているいますが、これは、遺産をめぐり相続人間で
の思惑があり、遺産分割協議の話がまとまらず裁判所に解決を求める例が多いと言えます。
また、相続人間の様々な事情、思惑等が交錯し民法の規定する法定相続分では、遺産分割協議
の話がまとまらず血のつながった相続人同士が、争い、仲たがいをしています。
このような相続人間の争いを事前に防止するために、家庭の事情に応じた、各相続人の職業、
年齢、生活状況、親に対する貢献等を判断して遺言を作成することで、相続人間の争いを未然
に防止することができます。
★ 血のつながった相続人間の争いは、本当にすざましく徹底的に争います。他人の場合には
お金で解決してすることが多いのですが、相続人間は骨肉の争いとなります。
やはり、血のつながりがあるため、怒り・敵対心や他人である連合いも関わるためか、他人の
場合とは異なります。
相続人間の将来の紛争を未然に防止するために、遺言を行いますが、それではどのような場合
遺言が必要とされるのでしょうか。
② 遺言が必要とされるケース
a 夫婦の間に子供がいないケース
夫婦間に子供がいない場合には、民法の規定により第三順位の相続人である兄弟姉妹が相続人と
して登場します。遺言がなければ、配偶者4分の3と兄弟姉妹4分の1との割合で相続します。
兄弟と言っても結婚して独立し家庭を持ち別々に生活をしており、財産は夫婦2人で築いて来た
はずです。兄弟の手助けはあったとしても、やはり夫婦で財産を築いています。
しかし、夫が亡くなり相続が発生し子供がいない場合には、兄弟姉妹が相続人となり残された妻
と遺産分割を行う事になります。
夫婦で築きあげた財産を夫の兄弟姉妹に相続されることは、認めたくないとの思い、心情がある
場合には、遺言で実現することができます。
兄弟姉妹には、遺留分がありませんので遺言で配偶者である妻に財産を相続させる旨を記載して
おくことにより、すべての相続財産を妻に残すことができます。
b 法定相続人でない者に財産を与えたいケース―次男の嫁に財産を贈りたい場合
妻に先に亡くなり次男の嫁に面倒をみてもらっていた夫は、次男の嫁に財産を遺したいと思って
も、次男の妻は義父母との間に法律上の親子関係はないため、相続人となることはできません。
このような場合は、熱心に面倒をみてくれた次男の妻に財産を遺す、贈りたいときには遺言書で
遺贈することができます。
★遺贈とは、遺言で自己の財産を特定の人に無償で与える事を言います。遺贈を受ける人を受遺
者と言います。受遺者は、相続人でなくともよく、会社・団体等の法人でも構わないされています。
c ある特定の相続人に事業承継させたいケース
個人事業主、中小企業の社長が亡くなった場合、原則として事業用資産や株式は、民法の定める
法定相続分に従って相続されます。
相続人が数人いれば、相続財産は共同相続され、遺産分割を経て分割されます。
しかしながら、会社をめぐり後継者争いが起こったりまた親の右腕となって会社の経営にあたり
会社を維持・拡大している相続人は、事業用財産や会社の株式が相続により分割されることによ
り事業活動ができなくなり、会社の経営を維持、継続することが困難になる事があります。
そこで、このような事態を避けるために遺言により事業承継に障害がないようにしておくことが
必要となります。
会社の後継者への経営に引継ぎ(事業承継)を円滑に行うために平成20年10月1日から「中小
企業における経営の承継の円滑化に関する法律」が施行されています。
この法律により、事業承継がより円滑に進められることになりました。
c 内縁の妻のケース
内縁の妻は、相続権がありません。内縁の妻は長年に渡り事実上の結婚生活を送っていますが婚姻
届を提出していないため法律上の配偶者であると認めれておりません。
夫婦としての実態があり、社会的には夫婦として認められながらも婚姻届が出されていない夫婦を内縁関係と言います。
このように、内縁関係ではいくら長く暮らしていたとしても、内縁の夫が亡くなった場合、その法定相続人が相続し、内縁の妻は何も遺産を相続できないことになります。
そこで、内縁の妻に遺産を残すのであれば、遺言により遺贈する必要があります。
d 相続人がいないケース
相続が発生しても相続人がいない場合がありますが、このようなときは民法の規定に従い様々な手続きを経て相続財産である遺産は、国庫に帰属します。つまり、国のものになります。
そこで、国よりは相続財産である遺産を、親しい友人、今までお世話になった近所の人や施設、自分の出た学校等に寄付をしたいと思うこともあります。
このような場合には、遺言により遺贈する必要があります。
e その他に相続人間で揉め事があらかじめ予想される場合、特定の子供(長女・次男)により多く
の財産を残したい場合等に遺言を行う必要があります。
(3)遺言能力・遺言事項
①遺言能力
遺言は、誰でもできるのでしょうか!例えば、原則として未成年者が売買契約を行う場合には法定
代理人(親)の承諾が必要です。未成年の遺言の場合は親の承諾が必要なのでしょうか。
遺言をするには、遺言能力を有していること必要とされています。これは、自分の財産を処分する
ため、その意味を合理的に適正に判断できる能力が要求されます(民法963条)。
この能力については、民法961条において「15歳に達した者は、遺言を行うことができる」し
いるため、満15歳以上であれば有効な遺言を行うことができます。
つまり、売買契約の場合と異なり、法定代理人(親等の親権者)の同意がなくても遺言を行うこと
できます。
また、成年被後見人、被保佐人、被補助人でも単独で遺言を行うことは可能です。もっとも成年被
後見人は、通常は判断能力がないとされていますが、体調等により判断能力が回復する場合があり
ます。このようなときは、遺言を行うことができます。
この場合、2人以上の医師が立ち会い、遺言をするときに判断能力を欠く状態ではなかった事実を
医師が遺言書に付記して署名・押印することで遺言することができます(民法973条)。
★ 遺言の撤回
遺言を書いた場合は、その遺言書に拘束れるのでしょうか!やはり気が変わり遺言書の内容を変え
たいと思ったときはどうなるのでしょうか。
遺言は、いつでも変更したり取消したりすることができます。
遺言は、遺言者が死亡した時に効力が発生します(民法985条)。遺言は遺言者が死亡するまで
は効力が発生していないことになります。
効力が発生する前に、つまり生きている間は、遺言内容を変更したり、取消したりすることができます。
民法1022条は「遺言者は、何時でも、遺言の方式に従ってその遺言の全部または一部を取り消
消すことができる」と規定しています。
従って、遺言は何回も書き直すことができますし、一番最後に作成した遺言(日付けが新しい)が
有効となります。
② 遺言事項
遺言は、どのような内容を記載しても法律上の効力が認められるものではありません。例えば、
「親孝行しなさい」「兄弟仲良く暮らすように」を記載することは可能ですが、精神的な意味合い
のほかは、法律上の遺言としては効力がなく意味を持たないとされています。
無条件にどのような事でも遺言で行える訳ではありません。
遺言として法律上の効力が認められる内容・事項は民法によって以下のとおり規定されています。
a 遺贈・寄付行為等の遺言者の遺産の処分(民法902条)
b 推定相続人の廃除または廃除の取消(民法893条)
c 相続分の指定または指定の委託(民法902条1項)
特定の相続人分のみの指定も可能です(民法902条2項・903条3項)
D 遺産分割の方法の指定(民法908条)
第三者に委託することもできます。
E 遺産分割の禁止(民法908条)
最大5年間遺産を分割することを禁止することができます。
F 相続人相互間の担保責任の指定(民法914条)
G 遺言執行者の指定(民法1006条)
第三者に指定するすることの委託も可能です。
H 民法の遺贈減殺方法とは異なる方法の指定(民法1034条但書)
I 認知(民法781条)
法律上の婚姻関係にない男女間に生まれた子の認知は、遺言によっても行うことができます。
認知された子(非嫡出子)は相続人となりますが、相続分は嫡出子の2分の1となります。
J 未成年後見人の指定(民法781条)
親権者が1人もいなくなった場合のみです。遺言で第三者に指定の委託ができます。
(3)遺言の方式・種類
遺言は、民法に規定された内容・方式に従って行う必要があります。民法の定めた方式に従わない
と遺言の効力が認めれれないことになります(民法860条)。
★ 遺言の方式には普通方式と特別方式があります。
普通方式には自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言があり遺言者が選択することになります。
特別方式は、普通方式による遺言ができない事情がある場合に行われる遺言です(民法967条)。
普通方式
自筆証書遺言(民法968条) | 遺言者が自分で内容全文、日付、氏名を書いて押印し作成する遺言です |
公正証書遺言(民法969条) | 遺言者が遺言の内容、趣旨を口頭で述べ公証人がこれを筆記し公正証書として作成して行う遺言です |
秘密証書遺言(民法970条) | 遺言があることは明らかですが、遺言の内容を明らかにせず秘密にしておきたい場合に作成する遺言です |
なお、実際に多く使用されている遺言は、公正証書遺言と自筆証書遺言です。
特別方式
危険な状況が目前に迫っている場合 |
一般危急時遺言(民法976条) | 病気その他事由によって死亡の危険が迫ったときに、証人3人以上の立会のもとで証人に遺言の趣旨を口授し証人が筆記して、全員に読み聞かせることにより行う遺言 |
難船危急時遺言(民法979条) | 船舶が遭難した場合、遭難した船舶中にあって死亡の危険が迫っている者は、証人2名以上の立会のもとで、口頭で遺言を行い証人が筆記し署名・押印をする遺言 |
一般社会から離れた場所にいる場合 |
一般隔絶地遺言(民法977条) | 伝染病のため行政処分により交通の断たれた場所にある者は、警察官1人及び証人1人の立会のもとで遺言書を作成して行う遺言 |
船舶隔絶地遺言(民法978条) | 船舶に乗っている場合に、船長または事務員1人及び証人2人以上の立会のもとで遺言書を作成する遺言 |
以上のように、特別方式による遺言は、遭難や事故で死亡の危険にある状態または伝染病で隔離され隔
絶地にいる場合など特殊ときに使用されます。
従って、普通方式による遺言が一般的に用いられます。
(4)自筆証書遺言
筆証書遺言は、遺言者が遺言の内容の全文、日付、氏名を自書し、これに押印して作成する遺言です
(民法968条)。この遺言は、誰にでもいつでもできる簡単な遺言といえます。
例えば、便箋・レポート用紙・コピー用紙等の紙に遺言の内容すべてと日付、氏名を自分で書き押印することによって成立する遺言です。
長 所 | 短 所 |
① いつでもどこでも1人で簡易に作成することができます | ① 遺言の作成について詐欺・強迫の可能性があります、また遺言書をなくしたり、隠されたり、偽造・変造される危険があります |
② 証人が不要なため遺言のある事や内容を秘密にすることができます | ② 遺言が民法の定める方式を満たしていないと無効になる恐れがあります。内容が不明確だと争いのもとになります。 |
③ 自分で作成できるため費用がかかりません | ③遺言を執行するには家庭裁判所の検認(けんにん)という手続きが必要とされます |
★ 自筆証書遺言が有効に成立ためには以下の要件が必要とされます。
① 遺言者が遺言をすべて自書すること。
自書とは、遺言者が自分の意思で自ら書くことが必要とされています。自書が要求されている理由として遺言者の本当の意思を確認し、偽造、変造を防止することにあります。
自書が必要とされているため、パソコン・ワープロ・タイプライターや他人が書いたものは、無効です。
また、ビデオ・テープレコーダーに遺言内容を記録した場合も無効とされています。自書とは言えないからです。
② 遺言者が日付けを自書すること。
遺言に日付けが要求されています。これは遺言成立が成立した時期を明らかにし、遺言能力が在るかないかを判断する時期、内容が抵触、矛盾する複数の遺言書がある場合の判断のために必要とされています。
従って、日付けのない遺言は無効とされます。日付けは自書しなければならないためゴム印スタンプで日付けを押しても無効とされます。
日付けは、普通、平成24年5月27日ように年月日で表されますが、日付けは遺言が成立した日が明確に分かれば良いとされています。例えば、「私の第○○回の誕生日」等です。
ところが、平成24年3月吉日との記載は、遺言成立の日が確定できないため無効とされています。
③ 遺言者が指名を自書すること
遺言を自書するのは、遺言者の意思に基づくのもであること、遺言者の同一性を明確にすることに
あります。
従って、氏名がない遺言や他人が書いた遺言は無効とされます。
氏名は、遺言者が誰であるのか、遺言者の同一性が分かる程度であればよいとされています。
普通は、戸籍とおりの氏名が使用されますが、遺言者が誰であるのかがはっきり分かれば戸籍上の
氏名でなくてもよいとされています。
例えば、遺言者が日常生活において使用してる芸名・屋号・通称・ペンネームでもかまわないとさ
れています。また、氏名が遺言書自体になく、封筒にある場合ですが、遺言書と封筒は一体をなす
ものとして有効とされています。
④ 遺言者が押印すること
遺言には、印を押す必要があります。押印が要求されるのは、自書と同様に遺言者の意思と同一性
を確認することにあります。自分で遺言を作成し氏名を書き印まで押してあるだから遺言を作成す
る意思であったと推定されます。
従って、押印がない場合は、遺言は無効となります。押す印鑑については、特に制限がなく実印・
認印でもよく、さらに判例上「拇印や指印」でもよいとされています。
押印する場所は、特に制限はありませんが、氏名の下になされるのが一般的です。
■ 自筆証書遺言は、遺言書を封筒に入れて封印しておくことは必要とされていませんが、破損や偽造
変造を防ぐためには、封筒に入れ封印しておく方がよいと思われます。
(5)公正証書遺言
公正証書遺言とは、遺言者が遺言の趣旨を口頭で述べ、公証人が筆記する等により公正証書を作成す
る事により行う遺言をいいます(民法969条)。
つまり、遺言者は公証人によって遺言を作成してもらい更にその遺言書を保管してもらいます。
公正証書遺言は、公証人という法律専門家が関与し作成するため遺言の効力に争いが生じると言うこと
殆どありませんし、公証役場に保管されるため紛失がありません。
長 所 | 短 所 |
①公証人が作成するために内容が明確、確実です | ①公証人が関わるため作成手続きが面倒である |
②遺言書の原本を公証人が保管するため紛失したり偽造・変造される恐れがありません | ②証人2人以上が必要なため証人の手配が必要となってきます |
③字が書けない状態の人でも作成することが可能です | ③公正証書作成費用と時間がかかります |
④遺言の検認手続き不要です(民法1004条2項) | ④公証人・証人に遺言内容が知られてしまいます |
★ 公正証書遺言が有効に成立ためには以下の要件が必要とされます。
① 証人2人以上の立会が必要です。
これは、遺言者がその遺言の内容を行う意思があり、そして公証人に口頭で述べたことを確認する
めめに証人2人の立会が必要とされています。
② 遺言者が遺言の内容を口頭で述べます。(公証人への口授)
遺言者が遺言の内容・趣旨を公証人に口頭で述べることをいいます。
③ 公証人によって筆記や読み聞かせが行われます。
公証人は、遺言者の遺言内容(口授)を筆記したうえで、その内容を遺言者と証人に読み聞かせる
必要があります。
これは、正確性を確保するために行われます。
④ 遺言者と証人が遺言・口授内容を承認し、各自署名押印します。
遺言者と証人は、筆記内容が正確であることを確認し承認します。そのうえで署名押印します。
⑤ 公証人による署名押印が必要です。
公証人は、証書(遺言証書)が民法の定める公正証書の方式に従って作られたものである旨を付記
して、署名押印する必要があります。
以上の手続きを経る事により公正証書遺言が成立します。公正証書遺言はその原本を公証人が保管
します。そして、正本と謄本が遺言者に渡されます。
もっとも、公正証書遺言を作成してあったとしても、遺言者が亡くなった場合、公証人から遺言が
公役場役場にあることを知らせてくれる事はありません。
せっかく、公正証書遺言を作成していたのに、遺言があることが分からないまま相続の手続きが行
わることが考えれます。
従って、ある相続人に公正証書遺言がある事を教えておく、または信頼できる親戚、知人に公証人
から受け取った公正証書遺言の正本の保管場所を教えておいたり、正本の保管をお願いしたりする
ことが必要と思われます。
■因みに、法律事務所に勤務していたときの経験として、公正証書遺言の証人になった経験があり
ます。そのときの経過ですが、遺言者は事前の打ち合わせによって公証人が遺言内容を書面にし
てあります。
そして、公証役場に行った当日は、公証人がこれを読み上げ遺言者と立会人が内容を確認したうえ
署名・押印します。住所と氏名はすでに書面に記載されいますので、私は印鑑を押しました。
遺言者本人は、実印ですが証人は実印である必要はないため、当日は三文判で押印しました。
証人として関わった遺言者は当時、70代後半の男性でした。今から約20年近く前の事です。既に遺
言書の効力は発生しているのでしょうか!また、相続人方々は仲良くされているのでしょうか!
(6)秘密証書遺言
秘密証書遺言とは、遺言があることは明確にしながら、遺言内容を秘密にしておくことを目的とし
てするために作成する遺言です(民法970条)。
すなわち、a 遺言者が遺言の内容を書いた書面に署名押印します。b 遺言者がその証書を封筒に入れ
て封印を行い、証書に用いた印鑑と同じ印鑑を使用して封印をします。
c 遺言者が公証人と2人以上の証人に前に封筒を提出し自己の遺言であることと筆者の住所・氏名
を申し述べます。d 公証人がその証書を提出した日付及び遺言者の申し述べた内容を封紙に記載し
て、遺言者、証人、公証人が封書に署名することによって成立する遺言です。
つまり、遺言者が遺言を作成して封筒に入れ封印を行い、2名以上の証人と公証役場に行って自分
の遺言であることを証明する遺言です。
長 所 | 短 所 |
①遺言があることを明確にし、その内容の秘密が保てます | ①公証人が関与することから手続きが面倒ですし、証人2人の立会が必要です、また手数料もかかります |
②公証人により公証されているため偽造・変造の危険がありません | ②遺言の内容自体は公証人が関与していないため、遺言内容をについて紛争が起こる可能性があります |
③署名、押印さえできれば文章を書くことができない人でも遺言が可能です | ③検認の手続きが必要とされています(民法1004条1項) |
★ 秘密証書遺言が有効に成立ためには以下の要件が必要とされます。
① 遺言者が遺言の証書に署名押印をすることが必要です(遺言書にはこれ以外に要件は必要とされ
ていません)
従って、この場合は全文を自分で書く必要はなく代筆やパソコンで作成することができます、また
日付は公証人が記載します。
② 遺言の証書を封入し、証書に使用した印鑑で封印します
遺言の内容を秘密にするため、遺言書を封筒に入れ遺言書に押印した印鑑で封印を行います。
③ 遺言者の申述が必要です
遺言者は、公証人及び証人2人以上の前に封書を提出して、自分の遺言であること及び筆者(書いた
人)の氏名、住所を申述します。
④ 公証人の封紙記載、証人、遺言者の署名押印が必要です
公証人は、遺言書の提出された年月日および遺言者の申述内容を記載した後に遺言者、証人と共に
署名押印します。
なお、秘密証書遺言の署名は自分で書くこと、自書でなければならないとされています。
■ 秘密証書遺言の保管は、公証人の署名押印後に遺言書の入った封筒を遺言者に返しますので
遺言者が保管することになります。
また、遺言者が亡くなった後には、家庭裁判所において検認手続きを受ける必要があります。
以上のように、公証人、証人が関与し費用をかけて遺言書を作成しますが、安全性や確実性からは
公正証書遺言の方が費用対効果の点からはよいとされており、秘密証書遺言の利用は少なく、あまり
利用されていないのが現状です。
(7)遺言書の開封と検認
公正証書遺言以外の自筆証書合遺言、秘密証書遺言は、遺言の執行家庭裁判所において検認が必要
とされていますが、検認(けんにん)とは何を意味するのでしょうか。
① 遺言書の保管している人や遺言を発見した相続人は、遺言者の死亡を知った後に遅滞なく遺言書
を家庭裁判所に提出して検認の請求をしなければならないとされています(民法1004条1項2
項)。
検認とは、相続人に遺言書の存在や遺言書の内容を知らせるとともに、遺言書の偽造、変造を防止す
すための手続きを言います。また、遺言書の存在を相続人全員に知らせるという役目も果たしていま
す。
言わば、一種の証拠保全手続きです。
検認は、相続人全員を家庭裁判所に集めて遺言書がどのような用紙に何枚書かれているのか、どの
よう内容がどんな筆記具で書かれているのか、日付、署名、押印はどのようになっているのかを確認
してその上で検認調書を作成します。
なお、検認は遺言の内容の真否とか有効無効を判定するものではなく、たとえ検認を請求していな
い遺言書であっても、その効力自体には何の影響も及ぼすものではありません。
検認を請求していないからといって、その遺言書が無効になるものではありません。
★ 検認手続きの方法について
a 戸籍や切手等の一定の必要書類を揃えて遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申立を
行います。
b 検認の申立後に、相続人全員に家庭裁判所から呼び出しの通知が来ます。
c 呼び出しを受けた相続人は必ずしも裁判所に出頭する必要は在りませんが、裁判所に行かなかっ
た相続人には後日検認済みの通知が届きます。
② 遺言書の開封
遺言書が遺言書を封筒に入れて封印がなされているときは、家庭裁判所において相続人またはその
代理人の立ち会いがなければ開封することができないとされています(民法1004条3項)。
開封は、検認手続きと同様に遺言書の偽造・変造を防止するといった点にあります。
開封手続きが要求されるのは、封印のある遺言書であり、封筒に入れた状態であるが封印がない
自筆証書遺言、また公正証書遺言は封印が不要なため家庭裁判所での開封手続きは不要です。
もっとも、開封手続きは、検認に含まれて行われることから検認の申請をすれば同時に開封も行わ
れます。従って、開封手続きだけが独立して実施される事はほとんど見当たらないと言えます。
因みに、「某銀行の定期預金はすべて次男に相続させる」と言った内容の遺言があった場合、そ
の定期預金名義を変更するためには、その遺言書を銀行に提出します。
ただ、ここで注意しなければないのは、提出する遺言書は、家庭裁判所において検認手続を終了
したものでなければなりません。
(8)遺言の執行
遺言は、遺言者の死亡によって効力が発生しますが、遺言の効力が生じた後に遺言の内容を実現
する必要がある場合があります。遺言の内容をそのまま実現することを遺言の執行と言います。
例えば、後見人の指定は遺言の効力が発生することにより内容が実現され、特別の手続きは不要
ですが、目的物の引渡しや土地の登記等は、実際にその手続き行う必要があります。
遺言の内容をそのまま実現することが遺言の執行です。
なお、遺言によって子を認知するとき、推定相続人を廃除する場合、廃除の取消しの場合は民法上
遺言執行者が必要とされています。
① 遺言執行者
遺言執行者は、遺言執行のために選任され、遺言者に代わって遺言の内容を具体的に実現させる
者を言います。
遺言執行者は、相続人の代理人とみなされており、遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務
を有しています(民法1012条)。
本来ならば、遺言の執行は相続人が自分で行うことができますが、相続財産や相続人が多い場合に
はは事務手続きの手間と時間がかかります。
仕事をしてる相続人や仕事をしていない相続人でも、法律的文書の作成や署名押印、役所の手続き
行うのは、面倒だと思われます。だからこそ、遺言執行者が必要とされます、また家庭裁判所によ
る遺言執行者の選任は増加の傾向にあるとされています。
なお、遺言執行者は、未成年者や破産者以外は誰でもなることができます。また、信託銀行等の法
人も遺言執行者になる事ができます。
② 遺言執行者の選任
遺言執行者は、a 遺言で指定される場合、b 遺言で遺言執行者の指定を委託された者が指定する
場合、c 家庭裁判所が相続人等の利害関係人の請求によって選任する場合があります
(民法1010条)。
遺言で遺言執行者と指定された場合でも、必ず執行者とならなければならない訳ではなく、就任を
拒否することもできます。
③ 遺言執行者の義務
遺言執行者は、就任を承諾したときは、直ちにその職務を行うことになり(民法1007条)、遅
滞なく相続財産の目録を作成して、相続人に交付しなければならないとされています(民法101
1条)。
遺言執行者は、相続人の代理人とみなされており、遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務
を有しています(民法1012条)。
★ 遺言執行者は、不動産登記手続きや銀行の預金名義の変更、払い戻しと言った相続人にとって
重要な支援者です。従って、本当に信頼できる、誠実な人になってもらう必要があります。
もちろん行政書士・弁護士等の法律専門職が秘密を守らなければならない義務を負うため候補者
としてよいのではないでしょうか。
なお、遺言の内容によっては、遺言執行者を選んでおいた方が良い場合、遺言執行者を必要とする
場合があります。遺言で決めていないときは、遺言者が亡くなってから家庭裁判所において決めて
もらうために、費用と時間と手間がかかります。
従って、事前に遺言書に遺言執行者を決めておくことが必要と思われます。
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