民法・債権法改正(1)

 

                                       【民法,債権法改正(1)】

 

T.債権法改正の概要

(1)現行民法の制定
@ 現行民法(明治29年法律89号)は、第1編総則・第2編物権・第3編債権は、明治29年(1896年)4月27日に公布、明治31年(1898年)7月16日に施行されました。

その後、平成16年(2004年)に漢語の文語体から全面的にわかり易い現代用語化されました。

A 第4編親族・第5編相続は、明治31年(1898年)6月21日に公布、同年7月16日施行されました。
また、日本国憲法の施行に伴い、(男女平等と個人の尊厳の理想)昭和24年(1947年)12月22日法第22号により全部改正、文章も文語体から口語体に変更され、昭和23年1月1日から施行されました。

債権法は、平成27年に法制審議会において採択され、平成29年(2017年)5月の第193回通常国会において改正法案が成立し、同年6月2日に施行されました。そして令和2年(2020年)4月1日に施行されています。

 

今回の改正は、120年振りの改正であり社会、経済の変化に対応するものであり、約200項目、条文数は300条以上が変更された大改正です。

今回の改正は、新しいルールを創設したほかに判例の内容を条文化したものであり、法律上の概念の平易化や消費者保護の観点に立脚しています。

 

債権法の改正により、契約に関する様々なルールが変更されました。従って従来の契約書の見直し急務となります。

改正債権法の施行後に改正前の民法の条文に準拠した契約書を使用していると、改正された債権法の条文・ルールに従わない趣旨なのか、権利義務関係の解釈等について疑義が生ずる可能性があります。

それよりも、改正された債権法に基づかない契約書や社内規程等を使用している事自体、コンプイアンス上の問題があり、企業そのものの信用・信頼を損なう可能性があります。


B 改正債権法に基づく契約書や社内規程等の見直しは、企業の法務部等において契約書を作成し相手方の企業と交渉した経験があります当事務所にお任せください。法理論だけではなく依頼者様の利益を確保する事はもちろん前提としまして、実務経験に基づき契約当事者がお互いWIN・WINの関係になる様な内容を提案します。

 

 

(1)民法総則の主要な改正点

@ 意思能力に関する規定(第3条の2)
意思能力(簡単に言えば判断能力の事です)の意思能力のない状態で行われた法律行為(例えば契約)は、意思主義の原則から無効とさています。これを条文として規定しました。

A 錯誤に基づく意思表示の規定(95条)
a 改正前は、錯誤は「法律行為の要素」について錯誤が必要とされていたが、要素の意義が分かりにくいため、「法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるとき」と規定されました。

また、錯誤に基ずく意思表示の効果は「無効」から「取消」に変更され、改正前は無効のため原則として何時でも主張でできましたが、これからは取消しの意思表示をしないと法律行為(契約等)の瑕疵・欠陥つまり無効を主張することができないとことになりました。

もっとも、錯誤により取消権を有することを知った後に、追認すれば取り消せなくなくなり(第124条)また、追認可能時から5年間で時効により消滅します。行為の時から20年間経過すると取り消せなくなるため注意が必要です(第126条)。


B 消滅時効制度の簡素化(第166条)
a 債権の時効期間について、従来は、「権利を行使することができる時」から10年とされてていましたが、改正により10年の他に、「債権者が権利を行使することができることを知った時」から5年という時効期間が新たに規定され、どちらかが早く到来した時点において債権が時効により消滅することになりました。

つまり、従来の「権利を行使することができる時」というから客観的起算点に加えて「債権者が権利を行使することができることを知った時」から5年という主観的起算点が新たに追加されました。

 

この客観的起算点と主観的起算点との関係は、一見分かりずらいですが、例えば10万円の時計をAがBに売却した場合は売買契約が成立しています。売主は買主Bに引き渡し時に代金の10万円を請求することができます(第555条)。

従って、時計10万円の代金請求権は時計を引き渡した時から10年間行使しないと消滅時効により代金請求権という債権自体が消滅します。これが客観的起算点です。

また、売主Aは、時計を買主Bに引き渡した時に代金である10万円を請求できることを認識、理解し知っています。
そこで「債権者であるAが時計を買主Bに引き渡した時から5年が経過すると代金請求権という債権は時効により消滅することになります。

 

このように契約に基づく各請求権の場合、通常は債権者は債務者に対して権利である請求権を行使できることを理解し知っていることから、主観的起算点の5年で消滅時効が完成することが多いと思います。


b 不法行為に基づく損害賠償請求権に関しては、生命または身体の侵害による損害賠償請求権は損害及び加害者を知った時から、従来は3年でしたが5年に変更されました。また、不法行為の時から20年で消滅時効により消滅することが明記されました(第724条2号)。従来は、除斥期間とされていましたが被害者の保護のために消滅時効とされました。


従来は、医師、薬剤師、工事の施工を業とする者、生産者、使用人の給料、旅館、飲食店等の債権や定期給付債権については、異なる時効期間が規定されていました。例えば、飲食店の飲食代金は1年、医者や工事関係者の債権は3年です。通常の債権は、10年とされていましたが、業種により異なるのは複雑なため、職業別の短期消滅時効を廃止し、これらを統一しました。

「権利を行使することができる時」から10年または「債権者が権利を行使することができることを知った時」から5年といういずれかの経過により債権は消滅します。

                従来の短期消滅時効期間

債権の種類 時効期間
医師の診療報酬債権  3年
公証人の報酬債権  2年
飲食代金の債権  1年
商取引上の債権  5年
一般債権  10年

 

また、これに伴い商行為により生じた債権は5年で時効により消滅するとしていた、商事消滅時効を定めた商法第522条は削除されました。

C 協議による時効完成の猶予(第151条)
当事者間で権利に関する協議を行う旨の合意が書面又は電磁的記録でなされたときは、次の時点のいずれか早い時まで時効は完成しない、と規定されました。
@ 合意があった時から1年を経過した時
A 合意において協議を行う期間が1年未満と定められていたときは、その期間を経過した時
B 当事者の一方が相手方に協議の続行を拒絶を書面又は電磁的記録で通知した時から6か月経過した時


つまり、@からBのうちもっとも短い期間が経過するまで時効は、完成しないことになります。

また、当事者は上記の@の場合で時効が猶予されている間に再度上記の@の合意をすることができる。ただし、その期間は、本来の時効完成時点から合わせて5年を超えることができないとされています。さらに上記の@の合意は、本来の時効完成時点までに行わなければならなず、催告によって時効完成が猶予されている間に行っても時効完成猶予の効力はないとされています。

この条文の趣旨は、債権者が時効の完成を防ぐために訴訟を提起する手続きや手間をなくすことにあります。

 

この協議による時効完成の猶予の規定により、当事者の協議による合意によって最長5年間の消滅時効の完成を伸長することが可能になりました。


(2)民法債権法の主要な改正点
@ 法定利率の改定(第404条)
a 従来は、法定利率は年5%の固定金利とされていましたが、今回の改正により年3%とされました。この年3%年率は市中の金利変動に適合して3年を1期として1期ごとに見直すという利率の変動制が採用されました。

この趣旨は、法定利率と市場経済における利率との現状の乖離、年5%では金利が高く、このような状況をなくし経済情勢の変動に対応することで柔軟で適切な金利を確保することにあります。

b 利率について別段の意思表示(特約)が無ければ、利率の基準時は、その利率が生じた最初の時点の利率となります。

例えば、金銭消費貸借契約に基づく貸金債権の場合(民法587条)、利息は金銭を受け取った日以降に請求することができるため(民法589条)、その金銭を受け取った日が利率が生じた最初の時点となります。その時の法定利率が適用されます。

 

その後に法定利率が変動した場合でも、一度決まった利率は変動することはないとされています。また、この法定利率の変動性が採用されたため、年6%の商事法定利率を定める商法第514条は削除されました。

また、不法行為に基づく損害賠償請求は不法行為時の法定利率が適用されます。金銭債権の債務不履行についての遅延損害金は債務者が遅滞の責任を負った時点の法定利率によります。もっとも、約定利率が法定利率を超えるときは約定利率によります(民法第419条)。


A 保証
a 個人保証の制限として一定の範囲の貸金等債務による個人保証について、その保証人の保護のための規定が設けられました。


個人が他人の事業のために保証することは、通常、保証の法律的な意味内容を良く分かない状態で行われことがあり、後で他人の借金を支払うという破目に陥ることあります。更に事業のための保証は、金額も多く保証人になった個人は経済的に過酷な状況に追い込まれます。

そこで、このよう事業のための貸金債務についての個人保証契約は、原則として保証契約日の1か月以内に保証人の保証を履行する意思が公正証書で表示されていなければ効力を生じないとされました(第465条の6第1項)。

この趣旨は、事業資金の借り入れの個人の保証について、公証人が関与することにより保証人の保証する意思を確認する手続きを行い保証の法的意味やリスク内容を理解し考えさせる機会を設けることで、事業のための貸金債務の個人保証から保証人を保護しようとすることにあります。

つまり、公正証書による保証債務を履行する意思が表示されていなければ、保証契約は無効となります。

もっとも、保証人になろうとする者が、事業のための貸金債務の主たる債務者が法人である場合の理事、取締役、執行役や株式を過半数有する者等の場合には、公証人による保証の意思の確認は適用されないとされています(第465条の9)。

これは、中小企業の借入金の場合、経営者に対して個人の保証が求められる場合が通常であり、さらに迅速な融資を行う必要性があるためです。


b 個人の根保証と極度額
個人の根保証は、保証人が保証により負担する極度額を定めてかつ書面または電磁的記録で契約されなければ無効とされます(第46jl45678905条の2)。

根保証は分かりにくい用語ですが、既に発生しているある特定の債務を担保するのではなく、継続的な取引から生ずる不特定の債務をひっくるめて包括的に担保することを内容とする保証です。また、極度額も分かりにくいですが、保証人が負担する枠、上限額、最大額といえます。


従来は、個人の根保証について、お金の貸し借り等の貸金等の保証をのみを保護の対象としていましたが、改正により個人の根保証は、貸金等に限られず、すべてに拡大されました。個人が根保証を負担する場合にはべて極度額を定めなければならないことになりました。従って、継続的な売買取引等の契約内容及び契約書作成時には注意が必要となり、契約書には極度額の記載漏れがないようにする必要があります。

これは、根保証は期間や保証内容が始めの予想と異なる事態が発生する等の状況の保証人保護の必要性は、貸金等以外の場合にも該当するためです。

例えば、賃貸借契約の賃借人の個人根保証を考えた場合、賃借人が長年に渡り賃料を滞納していたときは、極度額を定めておかないと保証人の不利益は著しく酷になると思います。


C 保証人に対する情報提供義務
保証人の保護ため情報提供義務が新たに規定されました。

ァ 契約締結時の情報提供義務(第465条の10)
事業のために生じる債務の個人保証を委託するときは、主たる債務者は、当該個人に対して債務者の財産や収支、債務の状況、担保として提供するものがあるか等を説明しなければならないと規定されました。

これは、保証契約締結時において委託を受けた保証人に主たる債務の正確な情報を提供するための規定です。世間では迷惑はかけない、ビジネスは順調である、保証人は他にもいます等の言葉により保証人になることがありますが、これを防止して保証人の利益を確保することにあります。

 

また、主たる債務者が情報提供義務を怠ったり、事実と異なる説明をしたことによって誤認した個人が保証人となった場合は、債権者がそのことを知っていたかまたは知ることができたとき、つまり債権者が悪意または有過失の場合に保証人は保証契約を取り消すことができるとしています。

もっとも、債権者は自分自身の関与しない事情により保証契約の効力が否定されることは、著しく不利益であることから債権者が主たる債務者が情報提供義務を怠ったり、事実と異なる説明をしたことを知っているか、または知ることができたときに取消権を行使できるとされました。

 

そこで、リスクへッジのために保証契約書には、保証人は主たる債務者から財産や収支、債務の状況、担保として提供するものがある等の説明を受けた旨、または事実と異ならない旨の記載をすることが必要と思われます。

イ 主たる債務履行状況に関する提供義務(第458条の2)
保証契約が成立した後に主たる債務者の履行状況について、保証人に対する情報提供義務の規定が定められました。


保証人から債権者に請求があったときは、債権者は、主たる債務の元本、利息、損害賠償、その他、主たる債務に関する全ての債務について、不履行の有無、債務の残額、履行期限が過ぎているものの額を知らせなければならない、とされました。

この規定の趣旨は、保証人は主たる債務の期限の利益(第137条)の喪失を回避するチャンスが付与されるべきであること、さらに保証人が主たる債務者の債務不履行が長期間にわたっていること知らず、遅延損害金が増えて多額の請求が来ることを防止することにあります。

また、この債務履行状況に関する提供義務は、委託を受けた保証人であれば、個人、法人を問いません。


ゥ 主たる債務者が期限の利益を喪失した場合の情報提供義務(第458条の3)
主たる債務者が期限の利益がある場合において、期限の利益を喪失したときは、債権者は、個人保証人に対し、期限の利益喪失を知ったときから2か月以内に、期限を喪失したことを通知しなければならないとされました。

この趣旨は、主たる債務者が債務不履行の状態になった状態を保証人が長期間にわたり知らないと予期しない多額の遅延損害金を請求される恐れがあるため、このような事態を防止することにあります。

また、債権者がこの通知を怠ったときは 、債権者は保証人に対して期限の利益喪失時から通知をするまでの間の遅延損害金にかかる保証債務の請求をすることはできないとされています。

なお、この場合は、法人は含まれませんが、委託を受けない保証人も対象となります。

 

B 債権譲渡の主な改正点
a 譲渡制限の意思表示(特約)のある債権譲渡の有効性
 従来は、譲渡禁止特約がある場合には、債権の譲渡は無効とされいました。例外として譲受人が善意のときは債権は有効に移転するとされていましたが、改正により、債権譲渡禁止特約が付されていても、債権譲渡は有効であるとされました。

この趣旨は、債権譲渡により債権の早期の現金化、資金化等の資金の調達・流動化を図ることにあります。


つまり、債権譲渡の制限の意思表示がなされた場合でも譲渡は、その効力を妨げられず、有効とされました(第466条2項)。

更に債権譲渡の制限の意思表示がなされたことについて悪意または重過失の譲受人または第三者に対しては、履行を拒むことができます、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務の消滅事由をもって第三者(譲受人等)に対抗することができると規定されました(第466条3項)。

なお、譲受人が悪意または重過失の場合でも債権の譲渡は有効とされるますが、この場合、債務者は譲渡人に対して履行義務を負わないことになります。何故なら、債権を譲渡しているため既に債権者ではないからです。

 

一方、債務者は譲受人に対しても悪意または重過失を理由に履行拒絶できます。そのため、債務者は譲渡人にも譲受人にも履行しなくてよいとった状況となりますが、こうしたデッドロックを解消するため、譲受人は、債務者に対し、相当の期間を定めて譲渡人へ履行するよう催告でき、その履行がなければ、譲受人への弁済を請求できることにしました(第466条4項)。


b 譲渡制限の意思表示がされた場合場合の債務者の供託
今回の改正において、譲渡制限の意思表示がなされた金銭を目的とする債権が譲渡された場合、債務者はその債権の全額に相当する金額を債務の履行地の供託所に供託することができるようになりました(第466条の2 1項)。

これは、譲渡制限の意思表示がなされた債権が譲渡された場合でも、有効であることから債務者が譲受人の善意や悪意等の判断の負担を軽減して、誤った弁済のリスクを負わせないようにするため新しい供託原因を新設しました。


C 預貯金債権に係る譲渡制限の意思表示の効力
預貯金債権については、譲渡制限の意思表示かなされた場合であっても債務者(この場合は銀行になります)は、悪意または重過失の譲受人または第三者に対して、その譲渡制限の意思表示かなされたことを主張することができます(第466条の5)。


分かりにくい条文内容ですが、銀行に対する預金、貯金については通帳や預金証書等に譲渡、質入れの禁止の記載があります。この記載により、一般に譲渡制限の意思表示かなされている事は、広く知れておりそれを知らないことは重過失があると言えます(最判 昭和48年7月19日参照)。

従って、債務者である銀行は、預金等債権の譲渡がされても金融機関である銀行は譲渡人である口座名義人に払い戻しをすればよいことになります。

銀行等の金融機関は、預貯金の膨大な払い戻し等の手続きを日々処理しており、支払いを譲渡人または譲受人のどちらにすればよいのかを判断することは難しく金融界の実情に適しないためです。
   

(3)民法 債権各論の主要な改正点
@ 危険負担については、改正により特定物か不特定物に関係なく当事者双方の責めに帰すすることができない事由によって目的物の滅失等の
履行ができない場合は、反対債権も消滅することにして目的物の引き渡し義務を負う債務者が危険を負担する債務者主義に変更されました。
(第536条)

 

A 解除

 

 

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