民法,債権法改正の概要・サマリー

 

            【債権法改正の概要・サマリーについて】

 

債権法改正により定型約款が新設され、時効期間,保証債務,売買契約,賃貸借契約,消費貸借契約,請負契約等のルール が大きく変更されました。

T.民法(債権法)改正の概略
債権法は、平成27年に法制審議会において採択され、平成29年(2017年)5月の第193回通常国会において改正法案が成立し、同年6月2日に施行されました。そして令和2年(2020年)4月1日に施行されました。

今回の改正は、新しいルールを創設したほかに判例の内容を条文化したものであり、法律上の概念の平易化や消費者保護の観点に立脚しています。

今回の改正は、民法施行後120年振りの大改正であり社会、経済の変化に対応するものであり、約200項目、条文数は300条以上が変更された大改正です。

特に、債権法は契約内容を規定しているため、個人はもちろんの事、企業における契約実務は多くの影響を与えます。


例えば、債権の消滅時効期間は、5年に統一されましたため、契約書の見直し、債権管理の在り方社内規程の見直し等が必要になってきます。

また、売買契約では、瑕疵担保責任の規定が削除され、且つ内容も大幅に変わり、瑕疵担保責任から「契約不適合性」という法律用語に変更されています。契約書の見直しは、必須となります。

 

当職は、企業の法務部において企業法務実務経験があり、契約書や社内規程の作成等の実務経験がありあます。法律に依拠しこちらの利益を確保することは、当然ですが、依頼された会社様の実情や取引先の関係を十分に配慮した現実にフィットした内容をご提案致します。

 
U.改正内容の概略
1)民法総則における主な改正箇所
@ 意思能力のない状況での法律行為(第3条の2)

A 錯誤による意思表示の取り扱い(第95条)
B 代理権の濫用(第107条等)

C 消滅時効の簡素化(第166条以下)

消滅時効では、多くの改正がなされています。消滅時効は、債権者が一定の期間に権利を行使しない場合、権利の不行使によって債権自体が消滅することを言います。

改正前は、職業別に例えば、商事債権は5年、医者の診療報酬債権は3年、飲食店の飲食代債権は1年とバラバラでした。

                    改 正 前  

 債権の内容 時効期間       
一般の債権  10年
商事取引債権  5年
医師診療報酬債権  3年       
飲食店代金債権  1年
運送費の債権  1年

 

しかし、今回の改正により原則としてすべて5年に統一されました。従って、債権者の立場のときは、文書保管規程や債権管理規程等についてリニューアルを行い対応する必要があります。

 


(2)債権総論における主な改正箇所
@ 法定利率の改正(第404条)
改正により、従来の年5%から年3%に引き下げられ、市中の金利変動にリンクして法定利率が変動する方法が採用されました。

 A 個人保証の保護(第465条の6以下)
保証は、改正によって保証人の保護のために、a 保証の上限枠である極度額の定めがなければ個人の根保証は無効にとされました。b 公証人による保証意思の確認手続きが必要とされ、この確認手続きを経なければ保証契約は無効とされます。

 B 債権譲渡に関する改正(第466条以下)
将来発生する債権について譲渡が可能であることが明文をもって規定されました。また、譲渡制限が付されている債権も譲渡することが有効となりました。

 C 債務引受の新設(第470条から第472条)
併存的債務引受、免責的債務引受が新たに規定されました。

さらに、債務不履行による損害賠償請求、弁済、相殺等も改正されています。

 

(3)契約総論における主な改正・新設箇所
@ 解除は、改正により大幅に変更されました。催告による解除(第541条)、催告によらない解除(第542条)を問わず債務者の「責めに帰すべき事由」が無くとも契約を解除することができるようになりました。
即ち、解除の要件として要求されていました「債務者の責めに帰すことができない事由によるものであるとき」は解除をすることができないとされていましたが、債務者の責め帰すべき事由は不要となり、債務不履行(第415条)があれば契約の解除ができるようになりました。

A 定型約款の新設(第548条の2)
各種の保険や証券会社、銀行といった金融機関との取引、ネット上の取引、バス、電車等の交通機関との取引において、その内容を画一的に規定した契約条項があります。いわゆる約款と言わます。

例えば、保険に入る場合、小さな文字でこと細かに定められているも書面を渡される場合があります。文字が小さく、条文数か多くその内容をすべて読み理解している人は、それ程多くはないのではと思われます。

 

今までは、約款に関する民法上の規定はありませんでした。そのため約款をめぐりトラブルになり訴訟になったケースもあり、今回の改正で定型約款として、a 定型約款が契約内容となるための要件、b 定型約款変更のための要件等が定められ、利用者の権利を一方的に制限し、義務を加重し相手方の利益を一方的に害する条項は効力が否定されます。

 

(4)契約各論
この分野は、贈与、売買、消費貸借、賃貸借、使用貸借、請負、委任等の個人の日常生活や企業の取引に密着する契約の大幅な改正がなされました。特に、売買や請負は瑕疵担保責任の内容が大きく変更され、賃貸借についても敷金が規定されました。

@ 売買(第561条から第572条)
一番重要な改正は、担保責任の内容が瑕疵担保責任から契約不適合責任に変更された点です。売主が買主に対して種類や品質に関して契約内容に適合しない目的物を引き渡した場合は、債務不履行になります。
その効果としては、履行の追完請求、代金の減額請求、損害賠償請求、契約解除を行うことが可能となりました。

      

救済の方法 買主売主共に帰責性がない 売主に帰責性がある場合
損害賠償 できません  可 能
解除  可 能  可 能
追完請求  可 能  可 能
代金減額  可 能  可 能

   

A 消費貸借(第587条の2)
改正前は、消費貸借契約は当事者間の合意の他に金銭等の目的物が借主に引き渡されること有効により成立するとされていました。目的物の交付により成立する要物契約とされ、貸主と借主の合意のみでは成立しないとされていました。

しかし、改正後は要物契約性が弱まり、書面で合意する場合には、目的物の交付が無くとも消費貸借契約は成立するとされました。書面、契約書を要求するのは、安易で軽率な消費貸借契約の成立を防ぐことにあります。いわゆる諾成契約です。

もっとも、書面によらない消費貸借は、従来のとおり目的物の交付により成立する契約とされ、要物契約が維持されています。

B 賃貸借(第605条以下)
今回の改正において、賃貸借は多くの内容が変更され、また、新しい内容が新設されました。
賃貸借の存続期間は、上限が従来の20年から50年に変更されました(第605条)。

 

賃貸人の地位の移転が新たに規定されました。賃貸している不動産が譲渡された場合、借主である賃借人の承諾が無くともその賃貸人である地位が譲受人に移転することが規定されました(第605条の2)。もっとも、譲受人は賃借人に対する対抗要件として所有権移転の登記が必要です。

また、従来、規定が無く解釈に問題があった敷金に関して規定が新たに設けられました。敷金の意義及び要件を定めた上、敷金の返還について、賃貸借が終了すること且つ賃借物が返還されることが必要と規定されました(第622条の2)。

C 請負(第634条以下)
請負は、請負人の担保責任の削除等といった大幅な改正や規定の新設が行われました。

注文者が受ける利益の割合に応じた請負人の報酬請求権の規定が新設されました(634条)。請負の報酬は後払いが原則ですが請負が仕事の完成前に解除された場合は、「仕事の結果のうち可分な部分によって注文者が利益を受けるときは、その部分を仕事の完成とみなす」と規定が新設されたため、部分的な報酬請求権が認められました。

 

また、請負人の担保責任が整備されました。請負は有償契約のため売買契約の規定が準用されために売買の担保責任の規定(第560条から第572条)が適用されます。その結果、売主の担保責任の代金減額請求権が請負の注文者にも認められことになりました。


また、買主の追完請求権についても請負の内容に応じて請負人に準用されます。

D 委任(第644条の2以下)
委任では、受任者の復受任者の選任に関する規定が新設されました。復受任者の選任が認められる要件と代理権を付与する委任における復受任者の権利義務の範囲について規定されました(第644条の2)。

 

受任者の報酬について改正、新設が行われました(第648条3項、第648条の2)。
受任者の責めに帰すことができない事由により委任が中途で終了した場合は、既に履行した割合に応じて報酬を請求することができるとされました(第648条3項)。履行割合型の場合です。

また、委任がその成果として目的物の引渡しを要するときは、引渡しと同時に報酬を請求することができます(第648条の2)。成果完成型の場合です。

E 使用貸借(第593条)
使用貸借は、改正前は返還の合意の他に目的物を受け取ることにより成立する要物契約とされていました。今回の改正により、目的物の受け取りが無くとも返還の合意をもって効力が生ずるとされ、諾成契約とされました(第593条)。

また、貸主は、借主が借用物を受け取るまでは、解除することができるとされています。もっとも書面によって使用貸借を締結した場合は、解除はできないと規定されました(第593条の2)。

F 寄託(第657条以下)
寄託は、改正前は、ある物を受け取ることによってその効力を生ずるとされ要物契約とされていましたが、今回の改正により、ある物を保管することを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずるとされ諾成契約とされました(第657条)。

また、寄託者は受寄者が寄託物を受け取るまでは、契約を解除することができるとされています。さらに、無報酬の受寄者は寄託物を受け取るまでは、契約を解除することができるとされていますが、書面によって無償寄託を締結した場合は解除できないとされています(第657条の2)。

 

    

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