【会社設立のメリット・デメリット】
(1)個人が会社を設立する場合、個人事業主が会社を設立して法人成りする場合どのようなメリット・デリットが考えられるののでしょうしょうか。
法律上、税務上、社会的観点から会社を設立する・法人成りすることによって具体的にどのような利益、不利益がありこの両者を比較し会社を設立するべきかを判断することが必要と思われます。
(2)会社設立のメリット
メリット1 税務上の長所
① 給料所得控除制度の利用によって所得税・住民税の節約ができます。
給料所得控除は、所得を算定するに場合、収入の一定割合を必要経費として控除されます。
したがって、会社から自己に対して給料を支払うことにより給料所得控除の分が上乗せされ、税金が安くなります。
② 家族に給料として所得を分散することによって低廉な税率の適用が可能です。
個人事業主の場合、事前に税務署に届け出る他に一定の要件が必要されていますが、会社は、配偶者や家族、親族が仕事を手伝うことに対して、勤務内容に適合した給料を支払うことができます。
これによって、所得を家族に対する給料との形で分散することができます。その結果として、全体的に税金を低くすることができます。
③ 退職金は必要経費として認められます。
会社の場合、従業員の退職金はもちろん、役員に対する支払れる退職金も必要経費とし認められます
もっとも、社会常識を超えるような退職金は必要経費とは認められないので注意が必要です。
④ 会社を資本金1000万円未満で設立することで1期と2期の消費税は免除されます。
個人事業者が会社を設立することによって、消費税免除の特典があります。
消費税は、基準期間の課税売上が1000万円未満であれば課税事業者とならないとの特例があります。課税売上が1000万円を超えたか否かの判断は、当期の売上ではなく基準期間と言われている2期前の売上高で判断されます。
即ち、個人事業主が会社を設立し法人成りしたときは、第1期第2期という事業年度は存在し
ないため(2期前の売上高はありません)、資本金が1000万円未満とすれば第1期第2期は
免除されます。これは大きな節税効果があります。
最も、1期2期の免税を受ける効果を最大に受けるためには、決算期との関係が重要と
なり、決算期を設立前にすることが必要です。第1期の期間が丸1年あり免税額か大き
くなります。
⑤ 欠損金・赤字の繰越控除が7年間できます。
青色申告の事業者が赤字となった場合、赤字を翌年度以降の黒字の決算期に相殺する
ことがでますが、これが欠損金の繰越控除制度です。
この制度は、欠損金・赤字が発生した場合に、事業年度の翌年以降にその赤字を繰り越して
翌年以降の黒字と相殺することができることになります。この繰越控除は、個人事業主の場
合は3年ですが、会社は7年とされています。
7年分の赤字を黒字から差し引くことができるため、かなり節税に役立つと思われます
メリット2 法律上・社会的な長所
① 会社は、個人事業主に比べ社会的信用があります。
会社は、取引に際して非常に社会的な信用があります。個人事業主または会社と取引
する場合、一般的には会社と取引を行うことが大多数と思われます。
会社は、会社自体の内容が法務局という行政機関の管理する登記簿謄本に記載されて
おり、誰でも閲覧することができます。例えば、商号のほかに本店所在地、資本金、目
的、役員の構成、成立年月日等が記載されているため、ある程度、会社の内容を知る
ことができます。個人事業主の場合は、このようなことはないため、信用を得るために
は時間がかかります。
② 融資・資金調達が有利になります。
会社は、個人事業主よりも非常に社会的信用がありますので、金融機関からの融資が
受けられ易くなります。会社は、貸借対照表、損益計算書を作成するため、経営内容を
正確把握することができ、金融機関は融資の判断が可能になります。
③ 助成金・補助金の利用が容易なります。
補助金・助成金は、国・地方自治体から支給される返済不要なお金です。助成金は様々な
種類がありますが、会社に限定される場合、社会保険に加入していないと利用できない場
場合等があります。申請資格を 会社に限定している補助金・助成金も多くあります。
④ 会社組織にすれば、個人資産の確保が容易になります。
個人事業主は、事業の借金・負債について個人事業主がすべて支払い義務を負担しま
す。これに対して、会社の場合は会社自体と会社代表者は、法律上別個の取引主体で
すので借金・負債の支払い義務は、会社の責任であり代表者個人に及ぶことはありま
せん。
最も、会社の代表者が会社の借金の連帯保証人になっている場合は、保証債務の履行
として返済を求められますが、このような事情がなければ会社の借金を代表者個人の
財産にて返す必要はないことになります。
⑤ 個人事業主、会社の代表者が死亡・離婚した場合。
個人事業主が事業の途中で死亡した場合は、商売で使用している預金や不動産は、相続
財産として相続人に相続されます。また、相続税の対象にもなります。
複数の相続人がいる場合、相続財産が共有され、または分割されたりして事業の継続に
障害となります。また、金融機関は預金者が死亡すると、その預金口座を凍結してしま
い相続人間の遺産分割が終了するまで引き出すことができなくなります。
このような状況は、事業の継続や資金繰りに支障が出る恐れあります。
これに対して、個人事業主が法人成りした会社は、法律上、別の取引主体であるため
に個人財産と会社の財産とは明確に区別され、会社の財産は会社自身の財産となるた
め、会社の代表者が死亡しても相続の対象となならないことになります。
また、会社の代表者が死亡した場合、会社名義の預金口座であれば、凍結されることは
ないため資金繰りに困ることはないといえます。
次に、個人事業主が離婚した場合ですが、個人用の財産、事業用・商売用資産を問わ
ず、配偶者に対する財産分与の対象となります。
会社の場合は、個人財産と会社の財産とは明確に区別され、会社の財産は会社自身の
財産となるため会社の代表者が離婚したときでも財産分与の対象にならないことにな
ります。
(2)会社設立のデメリット
① 会社設の設立・維持運営には費用・手間が増えます。
会社を設立するには、資本金は1円良でよいとされていますが、その他に様々な費用が
かかります。例えば、会社の根本規則である定款を作り、公証人に認証してもらうには
9万円の費用がかかります(電子定款のときは5万円)。その後に法務局に登記申請を
行います。
株式会社の場合は登録免許税として最低で15万円かかります。
その他に、会社の代表印や行政書士に会社設立手続きを依頼する費用がかかることか
ら約30万前後の費用が必要となります。
また、取締役の任期は、2年とされているため(株式譲渡制限会社の場合は、定款によ
って任期を10年まで延長できます)その都度、役員の変更登記を行わなければならず
費用・手間がかかります。
さらに、個人事業主とは異なり、会社は経営に関する重要事項は株主総会、取締役会
の決議が要求され、議事録を作成し本店では10年間の保管が必要とされています。
② 社会保険加入の義務化
個人事業主は、従業員が5人未満の場合は社会保険に任意加入とされていますが、会
社は、社会保険に加入しなければならないとされています。
健康保険、厚生年金保険について、その保険料は会社が半分を負担しなければならず、
従業員が残りの半分を負担することになっています。雇用保険も会社が一定の割合を
負担し、労働災害保険は会社の全額負担とされています。
これは、個人事業主として事業を行っていた時に比べてかなりの負担になります。

また、社会保険手続き等の事務手続きの負担も増えます。
そのためか、設立をお手伝いした会社様からは、よく給料、保
険の計算のため社会保険労務士を紹介してくださいとよく依頼
されます。
③ 利益が出ない場合でも税金がかかります。
個人事業主に比べ会社には、法人税・法人都道府県税・法人市区町村民税・法
人事業税・地方法人特別税が課税されます。この中で法人住民税(法人都道府
県税・法人市区町村民税)は、均等割額という会社の所得に関係なく、つまり
赤字、黒字を問わず資本金、従業員数によって課税されることになります。
④ 交際費が必要経費とならない場合があります。
個人事業主の場合、接待にかかる飲食代等の交際費は、事業と関係があれば必
要経費として認められます。しかし、法人成りして会社組織にすると事情は異
なってきます。
例えば、資本金が1億円以下の会社では、交際費は年間600万円まで制限さ
れておりその600万円の交際費のうち10%は適正な支払いであったとして
も必要経費とは認定されないことになります。
なお、600万円を超えた場合には、会社の必要経費としては認められないこ
とになります。なお、資本金1億円を超える会社の交際費は、法人税法上の必
要経費とはされていません。
⑤ 会社の事業資金を自由に使えなくなります。
個人事業主の場合、事業によって稼いだ資金を個人の私的生活に使用するため
に引き出すことは可能です。法人成りした会社の場合は、会社の財産と個人の
財産とは、はっりと区別されるためにー会社と会社代表者は、法律上、別個独
立の権利主体ですー
会社の代表者が生活のために会社からお金引き出して使用することはできなく
なります。
例えば、代表者が会社からお金を借りるときは、金銭消費貸借契約を当事者間
で結び利息を支払うことになります。自分の会社だから自由に使用できる訳で
はないことになります。
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